富士山は下山も大変です。
吉田ルートは、ジグザクの砂利道をひたすら降り続ける。
道中楽しめるような木や植物もありません。
当たり前ですが、山は登ったら降りなくてはなりません。
富士山では、「ゴールは山頂ではなく、下山したとき」「下山までが登山」と言われます。
下山の大変さも、ちょっと頭に入れておいてください。
吉田ルートは、ジグザクの、つづら折りの砂利道修行
私は下山に4時間かかりました。
ツアー20数名の中では早い方でした。
出発の際に「五合目総合管理センター」でもらった小冊子には、吉田ルート歩行時間の目安として、「下り4時間5分」となっています。
が、これは登山になれている人や若い人、まぁそれなりに体力がある人向けと考えた方がいいかもしれません。
吉田ルートは、登りと下りの道が完全に分かれていて、下りはひたすらジグザクの砂利道を降ります。
曲がり角には時々、目安の番号が書かれた道標があります。
下山の休憩ポイントの一つとなる「七合目公衆トイレ」付近の道標番号が「53」なので、トータルで53以上の角を曲がり続けるということなんだと思います。
曲がっても曲がっても道。
なかなかしんどいです。
富士山は五合目付近で既に森林限界を超えるので、道中、花や植物を楽しむことができません。天気が良ければ雲海や景色を楽しめますが、曇っていると、周囲は真っ白。
その中をひたすら独り、自分の肉体と話しをしながら下っていく感じ。
修行だなぁ・・・と思うゆえんです。
下りが苦手な人は実は多い。スキーや雪道に慣れている人は平気かも
「下りが苦手。足を出すのがコワイ」という人を何人か知っています。
登りがコワイという人は聞いたことがないけれど。
そもそも、重力やら引力やらに従って体を下方に落としていくのに、足でブレーキをかけて、自然の力を止めながら進む。
これは、足にかなりの負担がかかっているということです。
おまけに小さい砂利が、ズルッズルッと足(靴)を滑らすので、転ばないようにバランスを取る必要がある。
そんな状態を4時間。涙
持論ですが、スキーが得意な人や雪道に慣れている人は、比較的下りが得意な気がします。
私がそうなんですが、ストックを駆使しながらスキーで滑り降りていく感覚に似ています。
また、雪国では雪道でツルッと滑ることがよくありますが、地元の人は、滑った瞬間にバランスをうまくとって、転ばないですむことが多い。
あの感覚を身につけている人は、案外下りが得意かもしれません。
足が滑ったら、無理せず尻もちをつく。 前に転ばないように!
「ズルっと足元が滑ってしまったとき、早めに尻もちをついちゃってください」と、ガイドさんが、何度も説明してくれました。
斜度があるので、前方に転んだら危険です。
手には慣れないポールを持っているので、手をついたところが大きめの石だったりすると、手首を痛めるかもしれません。
へたすると、転げ落ちていきます。
「滑ったら、無理せず尻もちをつく」
覚えておきましょう。
「七合目公衆トイレ」目指して、最初は休憩なしでがんばる
9合目から「七合目公衆トイレ」まで、休まないで降り続けてくださいと言われました。
理由は、ブルトーザーや、上にいる人からの落石が怖いから、だそうです。
「谷川を歩くと落石を起こす危険がある」というのは、ガイドブックにも書いてあります。自分も落石を起こさないように注意します。
お気をつけください。
「七合目公衆トイレ」は休憩ポイントですので、そこまでがんばりましょう。
下山道に山小屋はない。水は山頂で多めに購入する
登りと違って、吉田ルートの下山道には山小屋がありません。
つまり、水の購入ができないということ。
登りはなくなる都度、購入できましたが、下山はそれができません。
山頂でペットボトルを購入してから降りるのがマルです。
余談ですが、もし山小屋でほしいものがあったら(絵葉書とか、記念の小さな金剛杖とか)、登りのときに購入しないともう買えないので、気を付けてね。
足がガクガク・ブルブルは、エネルギー不足
「七合目公衆トイレ」まで、順調に降り続けたのですが、到着して腰をおろしたとき、はじめて気が付きました。
足の「ガクガク・ブルブル」が、止まらない・・・。
ガイドさんに、「それはエネルギー不足の状態なので、水を飲んで、何か食べてください」と言われました。
慌てて、糖分と炭水化物を補給。
「下りは水分も取らない人が多いんですよね。でもエネルギー使ってますから」とガイドさん。
確かに、水分も行動食も全く取っていませんでした。
一度、自分の足の「ガク・ブル」を意識してしまうと、非常にしんどい。
私はここから先、徐々に電池が切れていって、とてもきつかったです。
まだまだ先は長かった。
足がしんどい人は、七合目のシェルターに入らず、外を歩く
七合目から六合目は、落石除けのコンクリートシェルターが3つ続きます。
「足が辛い人はシェルターに入らず、右側(外)を歩いてください」とガイドさんからアドバイスがありました。
シェルターの中は、途中ゆるい階段になっていて、足に負担がかかるからです。
私は迷わずそうしました。
六合目からがさらに長い
六合目で登りのルートと合流します。
前日通った風景でほっとしたのもつかの間。
ここから5合目のゴールまでが、信じられないほど長かった。
平坦な道に入っても、もはや足はコントロールがきかず、引きずるという表現がぴったり。
歩いても歩いても、五合目の出発点に辿り着かない。
これは、他の方々も同じ感想を持っていました。
そして五合目に到着・・・
五合目で待機している馬たちが見えた瞬間、生きて帰れた・・・と思いました。
いや、マジで。。。
あとでガイドさんが「富士登山は、生まれ変わりの登山と言われるんですよ」と教えてくれました。
まさに、一度肉体が朽ち果てた感じでした。
感動とか達成感より先に、もう歩かなくていい安堵感でいっぱいでした。
<続く>