富士登山で一番意識すべきことは、高山病にならないことです。
山頂の登頂率(成功率)が50~60%と、意外と低いのをご存じですか。
実はこのブログを書いている前後に、「私は(知人は、友人は)登頂できなかったの・・・」という話しを、たて続けに4件聞きました。
途中で断念する理由は、何と言っても高山病。強い吐き気や頭痛です。
八合目付近や山頂間近で、「気持ち悪い・・・」「吐きそう・・・」とうずくまる女性を何人も見かけます。
圧倒的に女性が多く、「山頂までもう少しなんだから、がんばってくれよ~」と、非情な言葉をかけているご主人の姿も見かけました。
女性が多いのは、高山病の原因が「浅い呼吸」によること。元々、女性の方が呼吸が浅い人が多いからです。
原因と対処法がわかれば、高山病を防いで、登頂に成功する確率がグッと高まります。
高山病にならず、登頂に成功する具体的方法を9つご紹介します。
1.行きのバスや車で、寝ない
前日の準備で寝不足の人も多いと思います。
早朝出発で、車やバスの中でウトウト・・・、は最初はいいのですが、富士山が近づいてきたら、寝ないこと!
吉田ルートの場合、5合目は標高2305メートル。これは結構な高さで、既に酸素は薄いです。
本来、1合目から登山するところを、バスで短時間で登るのですから、体が追いつきません(だから5合目で体を慣らしてから出発します)。
バスで登っているときに眠ると、呼吸が浅くなり、低酸素状態を加速させてしまいます。
ツアーバスで東京を出発したとき、ガイドさんは最初、「話はあとにしましょう。まずは寝る方は寝て下さい」と言いました。
そして、1時間半後に起こされました。
「5合目まであと1時間少しです。ここからは絶対に眠らないようにしてください」との注意がありました。
高山病対策は、行きのバスから始まります。
2.とにかく深い呼吸を意識する
何がなくても、まず呼吸です。
八合目くらいまでは「4つ吐いて2つ吸う」。これを意識してください。
まずたくさん吐く。そうすることで、たくさん酸素を吸えます。
山頂が近くなってくると、4つ吐くのが苦しくなってくるので、3つ吐くでも2つ吐くでもいいので、とにかく深く吐く。呼吸を意識し続ける。これが一番大事です。
3.「立ち止まったら深呼吸」と覚えておく
富士山はかなり渋滞しています。
2019年夏の登山者は23.6万人だったそうです。
前の人が立ち止まったり、時には〇合目の入り口で1時間待ち、なんていうこともあります。
そんなときは、「立ち止まったら深呼吸」と覚えておく。
合言葉のように覚えておき、止まったら、チャンスとばかりに大きく深呼吸してみる。
両手を広げて、顔と胸をあげて、新鮮な空気を、ゆっくり大きく吸う。
登っている途中で息が上がって、いつの間にか深い呼吸を忘れていても、「立ち止まったら深呼吸」を覚えておくと、自分の息を整えることができます。
4.ゆっくりトボトボ登る
体を少しづつ低酸素状態に慣らすため、ゆっくりゆっくり登ります。
「ウサギと亀」の亀くらい。
国会の「牛歩」くらい。
失恋したときの「とぼとぼ歩き」くらい。
一歩の距離は、靴の半分くらい。
初心者が多いツアーでは、ガイドさんは本当にびっくりするくらい、ゆっくりちょっとづつ登ります。その姿は、まるで失恋した人みたい。笑。
でもそれが、バテずに登頂する秘訣でもあります。
5.水分補給を怠るな
「登りの山小屋到着まで、最低600ml~1リットルは水を飲んでください」と言われます。
水分が足りなくなると、血流が悪くなり、高山病になりやすいくなります。
女性はトイレが気になって、ついつい水を飲むのが少なめになりますが、7合目に入ると、要塞のようにたくさんの山小屋が連なり、トイレには全く困りません(吉田ルートの場合)。
富士山のトイレは全て有料(200~400円くらい)なので、お金はかかりますが、高山病にならない方が大事です。
一度にゴクゴク大量に飲むとトイレに行きたくなりがちですが、ちびちび飲んでいると、汗もかくので、意外とトイレにはいかなかったりします。
お水も、ザックに背負うと重たいので、できればスタート時は500mlペットボトル1本で。
なくなったら、途中の山小屋で買う。荷物を軽くして、お金で解決するのが、初心者の正しい登山です。
私もガイドさんのアドバイスに従って、500ml1本で登り、無くなりそうなときに買い足しました。
6.山小屋での夕食の後、寝るのは1時間たってから
山小屋で夕食を食べた後、すぐに寝るのはNG。
少しでも仮眠したいのはわかりますが、最低でも1時間は起きていてください。
すぐ寝ると、呼吸が浅くなるうえに、内臓の働きも悪くなり、気持ち悪くなりやすいそうです。
7.山小屋で頭痛や吐き気を感じるときは、横にならない
ガイドさんによると、山小屋で仮眠中(あるいは起きた直後)に、急激に高山病の症状が出る人が多いそうです。
理由は、横になって寝ると、さらに呼吸が浅くなるため。
寝るときに「気持ちが悪いかも」「頭が痛いかも」と思ったら、横にならずに、体を起こしておいた方がよい。
壁があれば、もたれて仮眠。
でもその前に屋外に出て、外の新鮮な空気をできるだけ長く吸う。もちろん深呼吸で。
これは山小屋の方にも言われました。
「なるべく長く外で呼吸していてください」と。
私はそれで気持ち悪さがかなり軽減したので、その後横になって仮眠できました。
寒いけど、がんばりどころです。
山小屋によってはカイロを売っていたり、ペットボトルに熱い湯を入れて、湯たんぽのようにしてくれたりします。
翌日のために、星や山頂の灯りを見ながら、野外で深呼吸。
8.ヘッドライトは頭につけず、首にかける
ヘッドライトは、真夜中にご来光を目指す富士山のちょっとした醍醐味ですが、頭につけていると、バンドの締め付けで頭部が圧迫され、高山病が進みます。
登山者のほとんどが頭につけていますが、初心者向けのツアーでは、首にかけるように指示されます。
照らすのは前方でなく、足元。
首にかけた方が、顔を前に向けていられるので、姿勢も楽です。
でも私は、細いネックレスでも首がすぐに重たくなり、気持ち悪くなる体質です。
そのためヘッドライトを首にかけられずに困ったのですが、頭は絶対やめた方がいいとガイドさんに言われ、ウエストポーチに下向きに付けました。
それできちんと足元を照らすことができました。
ちなみに、私は新宿の『やまどうぐレンタル屋』さんでヘッドライトをレンタルしたのですが、そこでも同じように、「頭に付けずに首にかけた方が良いですよ」と言われました。
やっぱりプロはわかっているんですね。
9.酸素缶や酸素水は気休めと考える
これは対処法ではないですが、ガイドさんによると、酸素缶は気休めと考えなさい、といいます。
酸素缶は、酸素を吸ったその時は少し良くなったと感じても、缶の酸素がなくなれば、そのあと余計に辛く感じるようです。
「酸素ボンベくらい大量なら効果あるけど・・・」とガイドさんは言っていました。
へたにあてにすると、痛い目にあいそうな気がします。
酸素水は、これも大量に飲めば別かもしれませんが、そもそもたくさんのお水を持っては登れません。前述したように、500mlか、せいぜい1リットルです。
値段も高いし、あてにしないようにしましょう。
結果、高山病にならず、山頂でうどんもおいしく食べられる!
以上が「本当に効果がある、高山病にならない9つの方法」です。
一度高山病が悪化したら、食欲もなくなり、結果、エネルギー補給もできません。
吐き気を収めるには、思い切って吐くか、下山するしかありません。
「吐しゃ物だけは富士山に残してもいいと言われているけど、持ち帰るベテランもいるんですよ」と、ガイドさんがすごい話をしていました。
高山病は、高度が低くなると、うそのように楽になるそうです。
結局、呼吸(酸素濃度)がすべてということです。
せっかく山頂に登ったのに、山頂での「お鉢めぐり」のときに、「気持ち悪い…」と言って、うずくまった人もいました。
下山にもすごいエネルギーが必要です。
もし気持ち悪くて何も食べられないと、エネルギーの補給(炭水化物や糖質)ができず、下山は足がガクガク・ブルブルで、大変です(下山は、短い時間で大量のエネルギーを消費します)。
富士山の下山はちょっとした修行(あるいは地獄)。最悪、馬を呼んで降りる方法があるが、高額です
そう、山は登ったら、必ず降りなければなりません。
登山は「降りるまでが登山」「ゴールは下山したとき」と言います。
そしてはっきり言って、富士山の下山はちょっとした地獄です(マジ)。
景色のない砂漠をひたすら足を酷使して、下山し続けなければなりません(ルートによりますが、特に吉田ルートはジグザグ砂漠地獄だよ)。
下山は、想像以上に長く辛いです。
最悪、降りられなくなった人のために、5合目で馬が待機しています。8合目まで降りれば馬を呼ぶことができます。
8合目からの馬の料金、約5万円。
実は登山スタート前に、「5合目にATM があるので、念のため、登山前に5万円おろしてお財布に入れてくださいね」と、ガイドさんに優しく指示されました。
体調さえ悪くなければ、時間をかけて降りることができますが、高山病の強い吐き気だけはどうしようもない(頭痛は何とかなりそうな気がしますが・・・)。
とにかく初めての富士登山は、「高山病対策だけに集中する」「成功は、高山病に勝つこと」というくらいに考えてください。
ちなみに私がどのくらい呼吸をしていたかというと、帰宅後2日間、ひびが入ったかと思うくらい左右の肋骨(あばら骨)が痛かった(自分がんばったんだなーと驚きましたが)。
私は前日の準備でかなりの寝不足で、しかも車酔いもしやすい体質なので、正直かなり心配でした。
でもちゃんと登頂できました。
上記の一つ一つを守っていけば、多分、高山病は大丈夫です。