事故によって頸椎損傷し、口に筆を加えて詩や画を描き続けている星野富弘さんの詩です。
「速さのちがう時計」という詩集に収められています。
幸せという花があるとすれば その花の蕾のようなものだろうか
辛いという字がある もう少しで幸せになれそうな字である
星野富弘「すいせん」
この詩を初めて知ったのは、30年近く前です。
大切な人が亡くなった年の暮れに、恩師が、この詩を綴った手紙をくれました。
恩師は国語の先生でしたが、当時、中学校の教科書にこの詩が教材として載っていたそうです。
手紙には、
「一番の親不孝者は親より先に死ぬ者です。先生より先に死ぬ者です」
と書かれてありました。
そして、「前を向いて歩くことが最大のはなむけです」という言葉で締められていました。
当時は、その最後の部分にはほとんど目が留まらなかったような気がします。
何十年か経った今になると、そうなんだろうなあと思います。
いま辛い方が、せめていちりんの花の蕾に心安らぐ一時がありますように